2 「2030 年頃を見据えた情報通信政策の在り方」最終答申の概要
(1)2030 年頃の来たる未来の姿
少子高齢化による労働人口減少等の社会経済環境の変化、AIやロボット等の情報通信技術の進展を踏まえ
ると、2030年頃には、サイバー空間とフィジカル空間とが高度に融合・一体化し、また、サイバー空間が
新たな「社会」の一形態にもなり、これまでの生活空間が拡張される未来が予想され、人はより本質的な活
動に集中でき、あるいは全国どこにいてもそれぞれのライフスタイルやニーズに合った豊かな暮らしを営む
ことができるといった、Society5.0 の実現が期待される。
ア AI と人間の協働(AI エージェント)
AIと人間、AIと環境、AIとAIなどの相互連携によって、フィジカル空間における生活、経済活動をサ
ポートし、より豊かな生活を実現。
イ サイバー・フィジカルシステムの高度な融合
① ロボット等を活用し、サイバー空間からフィジカル空間へフィードバック(反映)することで、安全
性や効率性を向上。
② サイバー空間経由で遠隔のフィジカル空間の活動(生活、経済活動)に参加することで、足りない部分
を相互に補う、あるいはフィジカル空間にある制約から解放されて社会経済活動に参加(存在の遠隔化)
ウ 新たな生活・経済活動の場の登場(メタバース等)
アバターを通じて、フィジカル空間ならではの様々な制約から解放されて、サイバー空間で生活あるい
は社会経済活動を行う。
2030 年頃の来たる未来の姿
URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/datashu.html#f00359
(データ集) 関連データ
(2)2030 年頃を見据えた我が国が向き合う課題と今後の方向性
ア AI の急速な進化への対応
現在の生成 AI は、米国中心に開発・提供されており、学習データに偏りがあることから、予測精度の低
下や地域的バイアス等が課題。また、「AIを使いこなす」ことが生活者の利便性、あるいは社会・経済活
動における生産性を左右するため、若者はもとより全ての国民が一定程度使いこなせることが重要。
このため、日本人にとって使いやすい生成AIの利用環境の構築(日本文化等を反映した日本語による
AI基盤モデル(foundation Model))に資する取組や、国民がAI等のデジタルツールを巧みに活用する
能力の習得に向けた取組が必要。
イ ビジネス変革の促進・カーボンニュートラルへの対応
所有から利用への価値観の変化、既存のビジネス変革やカーボンニュートラルへ対応が求められる中、
グローバル展開を前提にしたサイバー・フィジカルシステムの高度化によるDXやGXの実現等が必要と
なっている。サイバー・フィジカルシステムを本格的に実現させるためには、サイバー空間からフィジカ
ル空間への接点となる「アクチュエータ」が重要。
我が国は、技術開発で先行するものの、製品化やサービス化で遅れを取ってビジネス展開で敗れるとの
指摘がある。海外では、国家戦略として自国に有利なグローバル・スタンダードを普及させようとする動
きも少なくなく、我が国でも能動的に官民が連携してルール形成を進めるなどの取組が必要。
また、サプライチェーンのグローバル化により、地域・業種・業態などの壁を越えたエコシステム実現
のため、相互運用性の確保などの国際標準化も重要になるが、その際、何のために標準化するのかの戦略
も必要。昨今、互換性や品質の確保といった製品にリンクした標準化活動だけではなく、環境などの社会
課題やサービス水準などの上位レイヤーでの標準化も重要。
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総合的な ICT 政策の推進 第 1 節
令和 5 年版 情報通信白書 第2 部 第5章総総総総総総総総総総総総総総総総総