ア コロナ禍以前の取組
我が国における電子政府・電子自治体推進は、1990年代半ばのインターネット商用利用開始を
契機とした IT 革命を背景に、5年以内に世界最先端の IT 国家となることを目標に掲げた「e-Japan
戦略」(2001)から取組が本格化した。e-Japan戦略の下、まずはオンライン手続の基盤となる行
政内部の電子化やネットワークインフラ整備、法やルールの整備等が推進された。
基盤整備が当初計画よりも前倒しで進んできたことを受け、2003 年(平成 15)に「e-Japan 戦
略Ⅱ」が策定された頃から、国民による IT の利活用や利便性向上を目指した取組が推進され、電
子政府・電子自治体においては、国に対する申請・届出等手続についてオンライン利用拡大に向け
た取組が推進された。
2008 年の百年に一度とも言われる金融危機に伴う経済失速、またデジタル技術の急速な進展を
背景に、2009年頃から、真に国民によって受け容れられるデジタル社会、及び国民に開かれた電
子政府・電子自治体を目指す取組が推進された。政府 CIO 制度導入等の IT ガバナンス強化が進め
られるとともに、オープンガバメント確立における重点施策として、オープンデータ化推進の取組
も開始された。
2010年代半ばの「データ大流通時代」の到来を背景として、2016(平成28)年に官民データ
活用推進基本法が施行され、翌2017(平成29)年5月、「世界最先端IT国家創造宣言」に官民
データ活用推進基本法に規定された政府の「基本的な計画」とを含む「世界最先端 IT 国家創造宣
言・官民データ活用推進基本計画」
*2
が策定されて以降は、行政サービスにおいても官民データの
利活用を前提とした「デジタル技術の活用による利用者中心サービス」及び「官民協働によるイノ
ベーションの創出」を掲げた「デジタル・ガバメント推進方針」
*3
及び「デジタル・ガバメント実
行計画」
*4
の初版が策定され、2019(令和元)年 12 月に施行されたデジタル手続法
*5
に基づきデ
ジタル前提で行政サービスの改革を図る「デジタル・ガバメント」の実現に向けた取組が推進され
ている。
イ コロナ禍を受けた今後のデジタル強靱化社会の構築に向けた検討状況
(ア)検討の経緯
2020(令和 2)年 7 月の「経済財政運営と改革の基本方針 2020~危機の克服、そして新しい未
来へ~(骨太方針2020)」
*6
では、「次世代型行政サービスの強力な推進―デジタル・ガバメント
の断行」を最優先政策課題と位置付け、今回の感染症対策で明らかになった様々な課題を受け、
データの蓄積・共有・分析に基づく不断の行政サービスの質の向上こそが行政のデジタル化の真の
目的であるとした。
また、同日に公開された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」
*7
においては、「デジタル強靱化社会」の構築を進めることが重要であると述べ、IT基本法の全面的
*2 「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議、2017.5.30)(https://www.
kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/honbun.pdf)
*3 「デジタル・ガバメント推進方針」(IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議、2017.5.30)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/
kettei/pdf/20170530/suisinhosin.pdf)
*4 「デジタル・ガバメント実行計画」(eガバメント閣僚会議決定、2018.1.16初版)(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/
densei_jikkoukeikaku.pdf)
*5 「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(平成十四年法律第百五十一号)
*6 「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~(骨太方針2020)」(2020.7.17閣議決定)(https://www5.cao.
go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf)
*7 「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2020.7.17閣議決定)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/
pdf/20200717/siryou1.pdf)
第 3 節 公的分野におけるデジタル化の現状と課題
令和 3 年版 情報通信白書 第1 部 112 デジタル化の現状と課題第1章