オ 国際電気通信連合(ITU)
国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union(本部:スイス(ジュ
ネーブ)。193か国が加盟))は、1865年パリで創設の万国電信連合と1906年ベルリンで創設の
国際無線電信連合が、1932 年マドリッドにおいて統合の後に発足した組織である。
国際連合(UN)の専門機関の一つで、電気通信の改善と合理的利用のため国際協力を増進し、
電気通信業務の能率増進、利用増大と普及のため、技術的手段の発達と能率的運用を促進すること
を目的としている。
ITU は、
① 無線通信部門(ITU - R:ITU Radiocommunication Sector)
② 電気通信標準化部門(ITU - T:ITU Telecommunication Standardization Sector)
③ 電気通信開発部門(ITU - D:ITU Telecommunication Development Sector)
の 3 部門から成り、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野
の開発支援等の活動を行っている。我が国は、各部門における研究委員会(SG:Study Group)
の議長・副議長及び研究課題の責任者を多数輩出し、勧告を提案するなど、積極的に貢献を行って
いる。
(ア)ITU - R における取組
ITU-R では、あらゆる無線通信業務による無線周波数の合理的・効率的・経済的かつ公正な利
用を確保するため、周波数の使用に関する研究を行い、無線通信に関する標準を策定するなどの活
動を行っている。中でも、各研究委員会(SG:Study Group)から提出される勧告案の承認、次期
研究会期における課題や体制等の審議等を目的とする無線通信総会(RA:Radiocommunication
Assembly)及び国際的な周波数分配等を規定する無線通信規則の改正を目的とする世界無線通信
会議(WRC:World Radiocommunication Conferences)は、3~4年に一度開催される
ITU-R 最大級の会合である。
2019 年(令和元年)10 月から 11 月にかけて、2019 年無線通信総会(RA-19)及び 2019 年世
界無線通信会議(WRC-19)が、エジプト(シャルム・エル・シェイク)において開催された。
RA-19では、審議の結果、2件の新規勧告及び3件の改定勧告の承認、2件の新規決議及び23
件の改訂決議等の承認、次研究会期における研究課題の承認等が行われた。次研究会期における
SGの役職については、SG 6(放送業務)の議長に西田幸博氏(NHK)、SG 4(衛星業務)の副
議長に河野宇博氏(スカパーJSAT)、SG 5(地上業務)の副議長に新博行氏(NTTドコモ)がそ
れぞれ任命された。
WRC-19では、第5世代移動通信システム(5G)での利用を念頭においた国際的な移動通信
(IMT:International Mobile Telecommunication)用周波数の拡大や、極めて高い周波数帯で
あり、これまで受動業務にのみ使用されていた 275GHz-450GHz 帯の新たな通信用途での利用等
が合意された。また、2023 年(令和 5 年)に開催が予定されている WRC-23 の議題についても審
議が行われ、IMT 用周波数の更なる拡大等を議題とすることが合意された。
(イ) ITU-Tにおける取組
ITU-Tでは、通信ネットワークの技術、運用方法に関する国際標準や、その策定に必要な技術
的な検討が行われている。ITU-T の最高意思決定会合であり、4 年に 1 度開催される世界電気通信
標準化総会(WTSA:World Telecommunication Standardization Assembly)が、2020 年
(令和 2 年)11 月に開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によ
第 8 節 ICT 国際戦略の推進
令和 3 年版 情報通信白書 第2 部 436 ICT政策の動向第5章