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COLUMN
コラム 新興国のリープフロッグ型発展を支えるスーパーアプリ
新しいデジタル技術やデジタルサービスの登場等を背景に、世界各国では急速にデジタル化が進展して
いるが、先進国のみならず、新興国においても、新しいデジタル技術やデジタルサービスが急速に普及し、
リープフロッグと呼ばれる一足飛びの発展が実現するようになっている。
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リープフロッグ型の発展が生じる背景
新興国でリープフロッグ型の発展が生じる背景としては、社会インフラの未成熟という社会的課題(ニー
ズ)と、スマートフォンやインターネットの普及(シーズ)の 2 つの側面がある。
社会的課題としては、例えば、医療体制が不十分、銀行口座の保有率が低い、交通インフラが十分に整
備されていないといった問題がある。こうした課題に対し、医師数や銀行口座開設数の大幅な増加や、交
通インフラを網羅的に整備することが解決手段となるが、このような対応には必要な負担も多く、それら
の環境整備にも時間もかかる。
他方、新興国においては、平均所得が増加するとともに、スマートフォンやインターネットサービスが
低廉化しており、より多様な国民がスマートフォンを介したインターネットサービスを利用できるように
なっている。
こうした 2 つの要素が組み合わさること等
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を背景として、伝統的な医療、金融や交通等のサービスに
こだわらず、社会インフラが未成熟であっても利用できる新たなデジタルサービスが新興国で出現してお
り、こうした生活を一変させる可能性を有するサービスの利用者は爆発的に増加している。
図表1 リープフロッグ型発展のイメージ
時間
● :先進国 ● :新興国
リープ
フロッグ サービスの質/普及度合い
先進国では元々インフラが充実し、
各種サービスは幅広い国民に提供
されていた。インフラの更なる充
実とともに、サービスの質も徐々
に上がる。
新興国ではインフラが未成熟。イ
ンフラは早急に整備できないため、
インフラを介したサービスの質は
中々高まらない。しかし、既存の
インフラでも対応できる新しい
サービスが出てくると、爆発的に
利用者が増え、普及する。
(出典)みずほ情報総研(2021)「新興国で急速に普及するデジタル技術の現状に関する調査研究」
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リープフロッグ型の発展を支えるデジタル技術を活用したサービス
リープフロッグの例となるデジタル技術を活用したサービスとしては、各国で普及するスーパーアプリ、
ケニアにおけるモバイルマネーサービス、ルワンダにおける医療分野でのドローンの活用(血液のドロー
ン配送)、インドにおける生体認証を活用した身分証明システムなどがあるが、大きくは①スーパーアプリ
型と、②先端技術活用型に分類できる。
①スーパーアプリ型は、多種多様なアプリ群(メッセージング、SNS、決済、送金、タクシー配車、飛行
機・ホテル予約、電子商取引など)を統合した一つのアプリであり、特に、人々の生活を支える基盤とし
て機能する。1つのアプリ上で多様な生活サービスを提供することで、生活を効率化・高度化することが
できる。
*1 令和元年版情報通信白書で述べたとおり、先進国では、新たな技術やサービスが登場しても、既存サービスとの摩擦が生じる場合や、
法制度の改正が必要となる場合には、普及までに一定の期間を要することがあるが、新興国ではこのような制約が少ないこともある。
令和 3 年版 情報通信白書 第1 部 44
コラム 新興国のリープフロッグ型発展を支えるスーパーアプリ 我が国におけるデジタル化の歩み序章