中小企業白書
小規模企業白書
(上)
新たな時代に挑む
中小企業の経営力と成長戦略
2025年版
中小企業庁編
2025年版
中小企業白書
小規模企業白書
上
新たな時代に挑む中小企業の経営力と成長戦略
中小企業庁 編
この「中小企業白書 小規模企業白書 2025年版」は、
- ・中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第11条第1項の規定に基づく令和6年度の中小企業の動向及び講じた施策並びに同条第2項の規定に基づく令和7年度において講じようとする中小企業施策
- ・小規模企業振興基本法(平成26年法律第94号)第12条第1項の規定に基づく令和6年度の小規模企業の動向及び講じた施策並びに同条第2項の規定に基づく令和7年度において講じようとする小規模企業施策
について、令和7年4月25日に閣議決定を経て国会に提出した年次報告に、新たにデータ、コラム、付属統計資料等を追加して編さんしたものである。
「中小企業白書・小規模企業白書」の発刊に寄せて
はじめに、今般の米国による関税措置をはじめとした広範な貿易制限措置は、中小企業・小規模事業者の皆様を含め、日本経済に大きな影響を及ぼしかねないものであります。皆様のご懸念・ご不安を払しょくできるよう、中小企業・小規模事業者の皆様への適切な支援に万全を期してまいります。
さて、2024年は、実に33年ぶりとなる高水準の賃上げ、100兆円を超える設備投資など、日本の経済に明るい兆しが現れ始めた年であります。2025年の日本経済は、まさにこうした「潮目の変化」を継続させ、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行できるか否かの分岐点にあります。成長型経済への移行を確実なものとするためには、中小企業・小規模事業者の皆様の更なる成長・発展が極めて重要であり、政府としても大いに期待しているところです。
一方で、依然として中小企業・小規模事業者にとって厳しい環境が続いていることは事実です。円安・物価高の継続、金利の上昇、構造的な人手不足等、乗り越えなければならない課題は数多く存在します。しかし、こうした状況は、従来のやり方に固執しているだけでは打開することはできません。むしろこれを契機として、自社の状況と目指すべき方向性を改めて見つめ直し、思い切ったアクションを起こすことが必要です。コストカット戦略から脱却して付加価値向上を重視する戦略に転換する。そのために積極的な投資に着手する。こうした「攻め」の経営へのシフトに向けて適切な対策を打っていくことが期待されます。
今回の白書では、このような力を経営者の「経営力」と位置づけ、ここに焦点を当てて執筆しました。実際に思い切った改革を断行し、成長・発展を実現した企業の事例も多数掲載しています。この白書が、中小企業・小規模事業者はもちろん、地方公共団体や支援機関等の幅広い方々に発見をもたらすことを期待しています。政府としても引き続き、賃上げ原資の確保に向けたサプライチェーン全体での価格転嫁の定着や、「稼ぐ力」の向上に向けた生産性向上支援といった対策に全力で取り組んでまいります。
結びになりますが、中小企業・小規模事業者の皆様が、足下の課題を乗り越え、成長・発展を実現することを祈念して、私の挨拶とさせていただきます。
令和7年6月
経済産業大臣
武藤容治
2025年版 中小企業白書の概要
円安・物価高の継続、「金利のある世界」の到来による生産・投資コスト増、構造的な人手不足など、中小企業・小規模事業者が直面する状況は依然として厳しい。一方で、地域経済・日本経済全体の成長の観点から、雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者への期待は大きい。激変する環境において、経営課題を乗り越え成長を遂げるためには、自社の現状を把握して適切な対策を打つ経営力が求められる。
第1部 令和6年度(2024年度)の中小企業の動向
- ・令和6年度は円安・物価高が継続し、30年ぶりに「金利のある世界」が到来した。輸出より輸入比率が高く、借入金依存度も高い中小企業にとっては、これらは利益下押しのリスクとなり得るため、中小企業・小規模事業者が直面する状況は依然として厳しい。
- ・また、2024年の春季労使交渉では、約30年ぶりの賃上げ率を達成するも、大企業との差は拡大した。中小企業の労働分配率は既に8割近く、更なる賃上げ余力も厳しい状況である。一方で、人手不足は依然として深刻な状況にあるため、人材確保のために業績改善を伴わない賃上げも増えている。
- ・こうした状況を踏まえれば、コストカット戦略は限界を迎えている。物価、金利、人件費の上昇と、構造的な人手不足に直面する今こそ、積極的な設備投資・デジタル化と、適切な価格設定・価格転嫁の推進により、付加価値や労働生産性を高める経営に転換していくことが必要である。
第2部 新たな時代に挑む中小企業の経営力と成長戦略
- ・中小企業がこうした課題を乗り越え、成長を遂げるに当たっては、経営者の「経営力」の向上が重要である。本書では、「経営力」について、個人特性面(他の経営者との交流、学び直しに取り組む経営者の成長意欲)、戦略策定面(経営計画の策定・実行、差別化や市場環境を意識した適切な価格設定等)、組織人材面(経営理念や業績等の共有を重視するオープンな経営や従業員を大切にする人材経営)の観点から分析を行い、経営力の向上が業績向上や人材確保に向けて重要であることを示した。
- ・その上で、中小企業が成長を遂げるには、売上高規模ごとに異なる「成長の壁」の打破が必要となる。成長の加速段階では、経営者にないスキルを持つ補完型人材の確保や、経営者の職務権限分散による一人経営体制の克服等が重要と考えられ、売上高100億円以上では、拡大する組織を経営者と共に支える経営人材やDX人材の確保等が重要と考えられる。さらに、企業規模拡大には、積極的なM&Aやイノベーション、海外展開の推進が有効な手段であることを示した。