続いて、マークアップ率と経営指標(経常利益率・設備投資額(売上高比)・賃金水準 64 )との関係性を見ていく。コラム1-1-7④図は、中小企業について、業種(中分類)ごとにマークアップ率の上位20%の企業をグループVとして、グループI~Vの五分位階級を作成したのち、製造業・非製造業それぞれにおいて集計し、各経営指標について、分位階級ごとに売上高加重平均値を算出したものである。なお、2016年度から2022年度まででマークアップ率を推計できた全ての中小企業を対象としている。また、設備投資額については、このうち「中小企業実態基本調査」における設備投資の実施有無に関する設問で、「設備投資を行った」と回答した企業のみを対象に集計している。
これを見ると、「中小企業・製造業」、「中小企業・非製造業」共に、マークアップ率が高い企業ほど、経常利益率・設備投資額・賃金水準が高い傾向にあり、適切な価格を設定することによる好循環を実現できている可能性がある 65 。
コラム 1-1-7④図 中小企業におけるマークアップ率と経常利益率・設備投資額・賃金水準の関係性(業種別)
| 業種 | グループ | 左軸 (%) | 右軸 (倍) | |
|---|---|---|---|---|
| 経常利益率 | 設備投資額 (売上高比) | 賃金/限界生産性 | ||
| 中小企業・製造業 | I | ~0.2 | ~4.0 | ~0.5 |
| II | ~2.5 | ~3.5 | ~0.7 | |
| III | ~3.5 | ~4.2 | ~1.0 | |
| IV | ~5.2 | ~5.2 | ~1.3 | |
| V | ~7.8 | ~7.8 | ~2.5 | |
| 中小企業・非製造業 | I | ~1.2 | ~2.5 | ~0.6 |
| II | ~2.5 | ~2.8 | ~0.9 | |
| III | ~3.5 | ~3.0 | ~1.1 | |
| IV | ~5.5 | ~4.5 | ~1.5 | |
| V | ~8.0 | ~5.0 | ~3.2 | |
資料:経済産業省「企業活動基本調査」再編加工、中小企業庁「中小企業実態基本調査」再編加工、財務省「法人企業統計調査年報」再編加工、内閣府「国民経済計算」
(注)1. ここでの中小企業とは、中小企業基本法第2条第1項の規定に基づく「中小企業者」を指す。
2. 2016年度から2022年度まででマークアップ率を推計できた全ての中小企業を対象としている。なお、設備投資額(売上高比)については、このうち「中小企業実態基本調査」における設備投資の実施有無に関する設問で「設備投資を行った」と回答した企業のみを対象に集計している。
3. 業種(中分類)ごとにマークアップ率の上位20%の企業をグループVとして、グループI~Vの五分位階級を作成したのち、製造業・非製造業それぞれにおいて集計したもの。
4. 経常利益率・設備投資額(売上高比)・賃金/限界生産性は、いずれも分位階級ごとの売上高加重平均値。
64 ここでの賃金水準とは、労働力の1単位追加により増加する生産物収入(限界生産性)に対する、労働力1単位に支払う賃金の比率(賃金/限界生産性)を指す。この水準が高いほど、企業の収益を従業員へ還元する度合いが高いことを表す。なお、この「賃金/限界生産性」は、内閣府(2023)と同様の手法により推計している。
65 この分析結果は、マークアップ率と経常利益率・設備投資額・賃金水準との相関関係を示したものであり、因果関係を示すものではないことに留意が必要。