事例
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経営状態を可視化できる管理体制を構築し、成長している企業
所在地 千葉県千葉市
従業員数 323名
資本金 9,000万円
事業内容 食料品製造業
株式会社食研
▶ 持続的に成長し続ける企業へ。経営管理の透明性向上が課題となる
千葉県千葉市の株式会社食研は、カツ類を主力とする食肉加工製品・冷凍食品のメーカーである。2010年の新工場竣工による生産能力拡大や新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における冷凍食品需要の急増等を要因に、2023年度の売上高は2010年度比約2.5倍に成長している。同社の新井裕社長は、2021年に大手食品メーカーから転職して入社。生産部門を管掌すると、売上高は好調に伸びている一方、大雑把な経営管理や作業の属人化が常态化している状況に問題意識を抱いたという。取引先や従業員などステークホルダーが増加する状況下、2023年に就任した新井社長は、同社の「非上場の中小企業」という意識を払拭し、持続的に成長し続けられる企業になるべく、変革に取り組んできた。
▶ 製造原価を詳細かつリアルタイムに把握できる体制を構築
新井社長の入社当時、同社では売上高と営業利益を注視した財務会計による月次管理を行っていたものの、製造原価の把握が不十分だった。新井社長は前職での経験から、日々の製造原価に裏付けられた管理会計の徹底による生産性改善が必要であると考え、改善に着手。同社では、既に生産に関するデータを管理するためのシステムが導入されていたが、活用は全く進んでいなかったため、このシステムの有効活用に着目した。同システムの本格活用に当たっては、IT人材の育成、管理会計の教育、工場業務の標準化による適切な労務費の把握が必要となった。まずIT人材の育成については、外部のコンサルタントを招き、若手主体でIT人材育成プロジェクトを設立。外部に一任するのではなく、持続的な運用のために社内人材が必要との考えからだった。管理会計の教育では、新井社長が自ら講師となり、千葉市と豊橋市の工場で従業員向けの勉強会を開催。週1回、半年を掛けて丁寧に教育を行い、限界利益や損益分岐点売上高等を重視する管理会計へと切替えを進めた。また、業務の標準化では、独自マニュアルを策定。“自分流”を徹底して排除し、全業務にルールを付して従業員に遵守させた。これらの取組が奏功し、現在では工場別・工程別・生産ライン別・製品別などの生産データを基にリアルタイムで製造原価を把握できる体制を構築し、この情報をベースに週次で業績検討を行うまでになっている。
▶ 透明性の向上は、業績だけでなく従業員のモチベーション向上にも効果が波及
これらの取組は様々な効果を生んだ。リアルタイムでの製造原価の把握により、生産性向上はもちろん、製造原価をベースとした価格交渉も進み、収益性は改善している。また、コスト削減効果を把握できるようになったことで、作業のみだった働き方は「作業+改善」へと変わり、生産性向上のみではなく従業員のモチベーションにも好影響が見られている。これは数値面にも表れており、2024年に実施した従業員エンゲージメント調査の結果は2023年から大幅に改善したという。成長を更に加速させるため、前述のIT人材育成プロジェクトの新たな取組として、管理部門の効率化を目指したRPA活用など、より高度なシステムの導入にも挑戦している。「売上高は七難を隠す」。持続的な成長を実現するためには、将来に向けた成長エンジンである無形資産を構築することが重要だ。優秀な人材を育て、効率的に組織を機能させることが持続的な成長につながる」と新井社長は語る。
新井裕社長
同社の千葉工場
IT人材育成プロジェクトの様子