②スケールアップに向けた組織・人材戦略
次に、企業規模を拡大するに当たって、事業者が重要と考えている組織・人材戦略について、スケール別に確認した(第2-2-19図)。これを見ると、「10億円未満」では、他のスケールと比べ、「経営者の兼務解消・権限委譲」の割合が最も高く、「その他専門的な人材の確保・育成」についても「10億円以上~50億円未満」に次いで高い割合となっていることが分かる。売上高10億円の「成長の壁」は、経営者一人で経営することの
限界であり、例えば営業人材や経理人材などの経営者に足りないスキルを補う専門人材の確保と、経営者に集中しがちな職務権限の委譲が必要であることがうかがえる 30 。また、「経営人材の確保・育成」、「DX人材の確保・育成」については、スケールが大きくなるほど回答割合が高くなる傾向にあることが分かる。100億企業への到達に向けては、事業拡大を伴う中で、DXによる業務変革と、経営者と同じ目線で判断できる経営人材の重要性が増していると考えられる。
第2-2-19図 企業規模を拡大するに当たって、重要と考える組織・人材戦略(スケール別)
| 戦略 |
10億円未満
(n=12,784) |
10億円以上~50億円未満
(n=5,186) |
50億円以上~100億円未満
(n=823) |
100億円以上
(n=508) |
|---|---|---|---|---|
| 採用の拡大 | 37.8% | 51.5% | 53.7% | 51.2% |
| その他専門的な人材の確保・育成 | 33.6% | 34.4% | 32.1% | 28.0% |
| 経営人材の確保・育成 | 32.7% | 39.2% | 40.5% | 44.7% |
| DX人材の確保・育成 | 11.7% | 17.6% | 20.7% | 23.2% |
| 経営者の兼務解消・権限委譲 | 9.3% | 6.7% | 5.2% | 3.1% |
| 研究開発人材の確保・育成 | 6.7% | 9.5% | 9.4% | 8.3% |
| ガバナンスの強化 | 4.3% | 7.7% | 10.3% | 12.2% |
| M&Aによる人材確保 | 2.4% | 4.2% | 4.9% | 4.9% |
| その他 | 3.5% | 1.6% | 0.9% | 2.0% |
| 特にない | 11.5% | 2.7% | 2.1% | 2.2% |
資料:(株)帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」
(注)1. 複数回答のため、合計は必ずしも100%にならない。
2. ここでのスケールは、直近(1期前)の売上高に基づいて集計しており、1期前において「事業を開始していない」と回答した事業者は集計から除いている。
3. 「その他専門的な人材」とは、「経営人材」、「DX人材」、「研究開発人材」以外の専門的な人材を指す。
4. 自社の経営方針について、「売上拡大」、「利益拡大」と回答した事業者に聞いたもの。
30 2023年版中小企業白書第2部第1章第3節では、従業員数の増加に応じて、経営者からの権限委譲が進んでいることを示した上で、権限委譲を進めている企業の方が、進めていない企業に比べて、売上高をより高めていることを確認した。この結果について、「権限委譲を進めたことが自律的な社員の増加や社員からの改善提案の増加につながっており、こうした状況下で既存事業の拡大や新規事業の創出に取り組んだことで、売上高の増加を実現している可能性が考えられる」と指摘している。