事例
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長期目線の経営計画を基にした人材戦略と事業展開に取り組む企業
所在地 大阪府岸和田市
従業員数 309名
資本金 9,000万円
事業内容 窯業・土石製品製造業
松浪硝子工業株式会社
▶ 売上拡大期に直面した経営課題と組織環境・人材育成における問題点
大阪府岸和田市の松浪硝子工業株式会社は、創業180年の医療用ガラス製品を製造する企業である。同社が生産する顕微鏡用ガラスは、国内シェアの約7割を占め、売上高の約8割を担う主力商品であるが、物価高騰や円安基調による原材料費、電力費などの上昇により利益率が低下している。一方、残りの売上高を占めている電子機器用ガラス事業は中国メーカーを中心とした海外製品との価格競争に陥りやすく、足下の売上目標達成を重視し、人員配置や設備投資を続けたことで、6年連続で赤字事業となっていた。また、先代社長は37年間にわたり辣腕を振るい、売上高を30億円から70億円へと成長させたが、トップダウン型の業務に慣れ、自ら考えて行動する人材が育ちにくい組織環境となっていた。同社では、更なる成長に向けて、電子機器用ガラス事業の付加価値を高めて第二の収益の柱に育てることに加え、次世代の経営を担える人材の確保・育成が課題となっていた。
▶ 9年先の未来像から逆算してマイルストーンを設定する
2023年に創業家以外から初めて社長に就任した安原弘泰社長は、従来の3か年計画から変更し、より長期的な成長を見据えた9か年計画を策定。長期目線で設定した目標から逆算して設定されるマイルストーンを重視した。例えば、電子機器用ガラス事業については、2032年の目標を2023年実績から大きく伸ばさせながらも、2029年まではあえて2023年実績を下回る売上目標値とした。従来の足下の売上目標達成を至上命題とする方針から転換し、長期的な視点で採算改善や人材の採用・育成に取り組むことにした。具体的には、同事業における不採算製品から撤退して時間の掛かる新技術開発や産学連携に取り組むことに加え、一朝一夕には確保が困難な技術開発人材や、海外法務、薬事を担当する人材の採用・育成をマイルストーンとして設定。トップダウンによる閉塞感を拭うべく、9か年計画の策定を部門単位に任せることに加え、運用面では会議でプレゼン・意見を述べさせるなど社員を関らせることで当事者意識の醸成を促し、モチベーション向上と社内コミュニケーションの活性化につなげている。
▶ 不採算事業の黒字転換を達成、将来への種まきも着実に実施
計画初年の2024年には、早速電子機器用ガラス事業が黒字に転換。加えて、部門間・部門内のコミュニケーションが活発になってきた。将来に向けた専門人材の採用には初めこそ既存社員から抵抗感が見られたが、すぐに不可欠なメンバーとしてなじんだ。9か年計画の達成を担う現在の中堅・若手社員は当事者意識を持ち、積極的な発言、未来志向の意見も目に見えて増えている。「来期はやる気のある若手を昇進させ成長を促す。常に長期的な視点を持ち、マイルストーンとのギャップを埋めながら適切な施策を打つことが大事だ」と安原社長は語る。
安原弘泰社長
本社外観
同社製品のスライドガラス