コラム
2-2-1
中小企業の成長経営の実現に向けて
1. はじめに
中小企業庁は、令和5年度に引き続き、令和6年3月~5月にかけて、「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」(座長・沼上幹早稲田大学教授)(以下、「本研究会」という。)を開催し、中小企業が「100億企業 22 」への成長を目指すことの意義や重要性を示した令和5年度の中間報告書に続き、令和6年6月、成長志向の中小企業経営者を増やし、100億企業の創出を加速化するための政策の在り方を示す「第2次中間報告書」を公表した。本コラムでは、本研究会の多岐にわたる検討課題のうち、重点的な議論が行われた、「成長機会の発掘・成長に資する経営者ネットワーク」を取り上げるとともに、100億企業への成長に向けて基盤となる要素として集中的に議論された、「成長資金の調達」及び「人材の確保・育成と組織体制の構築」に関するトピックについて紹介する。
2. 成長志向の経営者を増やすためのアプローチに関する議論
(1)100億企業の売上高規模に応じた特徴と、サプライチェーンのポジションに応じた特徴的・共通の打ち手等の分析
本研究会では、「経営者自身が、現状の正確な理解と危機感を持つこと/これらと表裏の関係にある成長メリットを知ること」へのアプローチの一環として、100億企業の成長過程の分析を実施した。同分析は、2002年~2022年の間に売上高10~70億円台から売上高100億円以上へ成長した企業1,653社を抽出し、全体の傾向についてデータ分析を行うとともに、さらにその中から比較的100億企業の数が多く地域の偏在が少ない業種から企業を抽出し、この群に対比のための非成長企業を加えた合計200社 23 の個別の成長過程を分析することとした。
全体のデータ分析 24 では、100億企業への成長過程で、総資産に対する借入金の割合の低下及び利益剰余金の割合の増加など、自己資本比率が高まる傾向が見られたことから、自己資本比率を高めるために必要な経常利益率の向上のため、特定の取引相手に大きく依存しないビジネスモデルの構想や自社でイニシアチブを持つことが重要であるとの示唆が得られた。
個社の成長過程の分析では、100億企業がこれまでに売上高の規模に応じて、どのような課題に直面し、どのような打ち手を講じたかを一般化した。サプライチェーン上のポジションごとに特徴的な、又は共通の打ち手を整理したところ、「事業戦略の構想・推敲」、「設備投資」、「研究開発」、「組織・人材・M&A」及び「資金調達」の各領域で、共通の打ち手が見られた。
22 年間の売上高が100億円超の中小企業のこと指す。
23 成長企業140社、非成長企業60社の合計200社を抽出。成長企業は、100億企業数の多い製造業、卸売業・小売業を中心に選定している。成長のきっかけを探るため、売上高が3~5年程度、一定規模(10~20億円台、30~40億円台、50~60億円台)にとどまったことのある企業を抽出した。非成長企業は、成長企業の比較対象として、上記の業種において会社法上の「会社」に該当し、かつ直近10年間の売上高が、10~20億円台、30~40億円台、50~60億円台のいずれか一つの区分にとどまっている企業を抽出した。
24 100億企業1,653社に関して、売上高等の財務データや経営者情報等の定性面についても分析を行っている。