3. 「人(社員)の幸せを中心に据えた経営」の具体的取組
「BE THE LOVED COMPANY REPORT」では、1. で示した「社員の幸せを中心とする経営の因数分解(概念図・案)」のそれぞれの項目に即したより実践的な事例企業について、2022年度版に35事例、2023年度版に23事例を掲載している。本稿では具体的な企業の実践事例を3社紹介する。
事例:株式会社ウエダ本社(京都府京都市)
<会社の羅針盤をつくり伝える-行動でらしさを>
株式会社ウエダ本社は、「働く環境の総合商社」として多様なプロジェクトを展開しているが、長期的なプロジェクトが多いため、単年度の売上げや利益が実態を反映しきれず、経営状況が決算書に正しく表れないという課題に直面していた。
この課題を克服するため、同社は「3カ年決算」という新たな考え方を導入。3年を1期と捉え、経営状況や今後の戦略を取引先と共有することで、短期的な業績にとらわれることなく、経営の視野が広がった。
また、自社が大切にする価値観を世に発信するイベント「京都流議定書」を主宰し、協力企業や顧客も招待することで、一層の信頼関係の強化と安心感を提供することにつながり、より良いビジネス環境と関係性を築くことができている。
事例:木村石鹸工業株式会社(大阪府八尾市)
<永続的な成長を目指す経営戦略-継続的な未来投資>
木村石鹸工業株式会社では、「広告宣伝費」「教育研修費」「コンサルティング費用」の三つの経費を「未来費用」として捉えている。これらの費用を自社の未来を創るための投資と再定義し、財務諸表上での位置付けを見直した。この考え方により、未来への投資が時間軸でのリスクヘッジになると考えている。
「この再定義により、経営者や幹部のマインドセットが変わる」と、同社の木村社長は述べる。短期的には費用対効果が見えづらいため、従来の価値観ではコストカットの対象とされがちだが、「未来費用」として捉えることで、これらの費用が減少することは「自社の未来に対する投資ができていない」ことを意味する。
結果として、持続的な成長を志向する経営者や幹部にとって、未来への投資ができていないことは心理的なプレッシャーとなり、逆に安定的な投資を続ける機運を高めることにつながっている。
事例:株式会社友安製作所(大阪府八尾市)
<組織デザイン-フラットさの醸成>
株式会社友安製作所では、一般的に社員が社長に意見を言うことが難しいとされる状況を打破し、フラットな社内風土を実現するために2014年から「ニックネーム制度」を導入している。この制度では、年齢や役職に関係なく互いに愛称で呼び合い、役職呼びを禁止することで、親しみやすい雰囲気を作り出すことに貢献している。これにより、新人や中途社員もスムーズに職場になじむことができ、上下の垣根が低くなったという。
さらに、全社員の業務日報をオープン化し、SNSを活用して全社員が自由に閲覧できる環境を整備した。これにより、部署を越えた業務の理解が深まり、自然な協力関係の創出に貢献している。また、社員同士が気軽に「いいね」やコメントをし合うことで、個々のモチベーション向上にも寄与し、これまで以上に意見を言いやすい職場文化を育むことに成功している。