コラム

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技術流出防止対策について

1. 技術流出リスクの高まり

国際的な安全保障環境が複雑化する中、企業が保有する技術の流出リスクが高まっており、これは中堅・中小企業も例外ではない。

かつては、国家により多額の予算が投じられる軍事技術の開発が先行し、それが民生技術にスピノフしていくことが一般的であった。しかし、現在は、民間の研究開発投資が拡大しており、それに伴い、民生技術が最先端をリードすることが一般的になっている。このため、民生技術の軍事転用という流れが拡大しており、そもそも、軍事技術と民生技術の垣根がなくなりつつある。優れた技術を持つ企業に注目が集まっており、技術獲得のターゲットとなるリスクが高まっている。

さらに、経済のグローバル化が進む中で、産業のサプライチェーンは、様々な国・地域と複雑に絡み合っている。これを背景として、国家安全保障戦略が指摘するように、他国が経済的威圧を行うことで自国の勢力を拡大しようとする事例も見受けられる。他国からの影響を最小化し、自国を強化する観点から、サプライチェーン上のチョークポイントとなる技術をいかに獲得するかは、経済安全保障を確保する上での各国の関心事項となっている。こうした背景からも、民間企業が保有する優れた技術が、国家組織レベルでターゲットとなるリスクが高まっている。

我が国は、優れた技術を数多く保有する技術立国であるが、その多くが中堅・中小企業によって支えられている。そのため、優れた技術を持つ中堅・中小企業における技術流出対策の強化が急務である。

企業経営の観点からも、技術流出が生じた場合には、利益の源泉や社会からの信用を失い、今後の取引に重大な影響を及ぼすことも懸念される。取引先や金融機関等のステークホルダーからの信頼を得るためにも、技術流出対策は、単なる「コスト」ではなく、企業経営上も不可欠な「投資」と捉え、積極的に取り組むことが重要である。その際には、中堅・中小企業は、技術流出対策に用いる経営資源に制約があるため、官民が連携して取り組んでいくことが重要である。

2. 技術流出対策に資する施策の紹介

企業が技術流出対策を進めるに際しては、流出の経路に応じた対策を進める必要がある。例えば、役務提供としての技術移転、人材の流出、買収、技術情報の不正取得・開示などが想定されるが、情報通信技術の発展に応じて、経路は多様化・複雑化し、獲得に向けてとられる手法も巧妙化している。具体的にどのような技術流出対策を行えばよいかは、各企業の置かれた状況や取引の形態によっても様々であり、画一的な正解は存在しないというのが現状である。

このため、企業は自らの強みとなる技術を正確に把握し、その保有主体や利用の形態等を踏まえ、想定される技術流出経路に応じた対策を講じていくことが必要である。経済産業省でも、技術流出対策の強化に取り組んでいるところであり、以下に紹介する施策を進めるとともに、産業界への普及・広報、アウトリーチ活動を実施している。

(1) 民間企業の好事例の横展開

多くの企業において、技術流出リスクを含む経済安全保障上の諸課題に関する問題意識が高まっているものの、具体的にどのような対策を講じればよいか分からないとの悩みも多い。このため、経済産業省では、技術流出対策に取り組む企業の好事例を収集し、民間ベストプラクティス集として公表している(令和5年10月、以降も継