事例

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サプライチェーン上の人権侵害リスクに対処し、SDGs経営に取り組む企業

所在地 東京都品川区
従業員数 70名
資本金 1,000万円
事業内容 ゴム製品製造業

雪ヶ谷化学工業株式会社
▶ 自社製品の一般化を背景に、差別化可能かつ環境にも配慮した製品開発を模索

東京都品川区の雪ヶ谷化学工業株式会社は、化粧品用、医療用、産業用などのスポンジを製造する企業である。かつて国内の化粧品用スポンジは天然ゴムを原料としていたが、ファンデーションが含む油分への耐久性が不十分で、アレルギーを引き起こすこともあるという課題があった。同社の主力製品である化粧品用スポンジは、原料を石油由来の合成ゴムに切り替えることでその課題を解決した画期的な製品となり、現在では世界シェア60%に及ぶ。しかし、一般化されやすい製品特性上、常に新興国の低品質・低価格な模倣品の脅威に直面してきたことから、2013年に就任した坂本昇社長は差別化が可能な製品開発を模索。加えて、同製品は石油由来の合成ゴムを主原料とするため生産過程で大量のCO 2 を排出することから、環境に配慮した製品開発の必要性も感じていた。

▶ 脱炭素化にとどまらず、人権侵害リスクに対処した製品開発と全社的なSDGsへの取組を推進

2019年、坂本社長は外部の勉強会への参加をきっかけに、SDGsに配慮した製品が今後ビジネスチャンスになるという着想を得て、脱炭素化につながる天然ゴムを原料に混合することを考案。さらに、天然ゴムの生産現場における人権侵害リスクを認識し、農園での児童労働・強制労働や不当な取引がないフェアトレード天然ゴムを用いることを発案した。並行して、人権侵害リスクへの対応を含むSDGsへの取組を全社的に進めるため、2020年に勉強会やワークショップを開催。従業員のSDGsへの理解を深めるとともに、取組への意識を高めるためのポスター制作や今後取り組むべき施策について議論を重ねた。さらに、各部門から選抜した若手従業員を中心に「SDGsプロジェクトチーム」を組成し、具体的な取組目標の設定と対外発信も行った。当初は従業員から取組への理解を得られなかったが、SDGsがメディアで頻繁に取り上げられ始めたことなどから風向きが変わり、「SDGsへの取組は慈善事業ではなく、社会課題解決への貢献と付加価値向上を両立する製造業の本質そのもの」という経営層による意識付けも徹底して、従業員が主体的に取り組む体制を構築した。2021年には天然ゴムからアレルギー物質を取り除く技術を開発して製品化に成功。原料調達に当たっては、同社のタイ工場からスタッフを派遣してタイのゴム農園の現地調査を行い、フェアトレード天然ゴムを用いたサステナブルスポンジシリーズの発売に至った。

▶ SDGsへの主体的な取組は、社内のみならず他社を巻き込もうねりに

サステナブルスポンジシリーズは、SDGsへの意識の高い企業に注目され、現在10社に計16製品が採用されている。また、人権侵害リスクへの対応やSDGs経営を進めた結果、メディアへの露出が増加したことで同社の知名度が向上し、取引先との関係強化や求人への応募数増加といった効果も表れている。さらに、従業員のモチベーションも向上して意識・行動が変容し、SDGsへの取組が加速。天然ゴムはフェアトレードの正式な国際認証がまだなかった中、プロジェクトチームを中心に同社独自で認証基準を設定し、作成・公開した「フェアトレード天然ゴムマーク」は、現在7社の企業が賛同してマークを使用しており、他業種にも活動が広がりつつある。「サプライチェーンの川上との関係性は日々強化されている。新たな差別化要素を加えたことによる製品価格上昇を許容する取引先はまだ少数だが、世の中の消費行動は変わると信じて粘り強く取り組んでいく」と坂本社長は語る。

坂本昇社長の肖像写真
坂本昇社長の肖像写真

坂本昇社長

サステナブルスポンジの製品画像
サステナブルスポンジの製品画像

サステナブルスポンジ

SDGsプロジェクトチームの会議の様子
SDGsプロジェクトチームの会議の様子

SDGsプロジェクトチームの様子