コラム

1-1-3 ローカルベンチマークの活用

ローカルベンチマーク(以下、「ロカベン」という。)は、いわゆる「企業の健康診断」であり、企業の経営状態を把握するためのツールである。企業の経営者と金融機関・支援機関等が対話しながら「ローカルベンチマーク・シート」を作成・活用することで、企業の経営改善等を目指すものであり、「6つの指標 22 」による財務情報に加えて、「業務フロー」、「商流」、「4つの視点 23 」による非財務情報によって企業の抱える課題や強みを把握できる点が特徴である。

ロカベンは、企業の経営者が自社の事業について理解を深めることに役立つだけでなく、金融機関・支援機関等と共に、財務諸表や事業計画では見えてこない事業者の強みや弱みの評価(事業性評価)の手段として活用することで、新たな融資契約へつなげることも可能と考えられる。ここからは、実際に金融機関がロカベンを利用して取引先の企業を支援した事例を紹介する。

コラム 1-1-3①図 ローカルベンチマーク・シートの例(株式会社スギムラ精工)

① 経営者 経営理念・ビジョン
経営哲学・考え・方針等
塑性加工技術を追求し人と社会に貢献する企業であるよう、日々努力し成長を続ける企業活動(ものづくり)を通じ、社会・顧客から信頼される企業を目指す ② 企業を取り巻く環境・関係者 市場動向・規模・シェアの把握 EV化が進んでいたため、シートベルト、ステアリング、トランスミッション系の受注に注力していたが、直近はエンジン部品が増加。現行の製品より強度・複雑化・軽量化が求められていたため増加傾向にある。
経営意欲
※成長志向・現状維持など
塑性加工技術で世界を目指す
成長志向企業であり、技術先行企業
顧客リピート率・新規開拓率 自動車メーカー1・2からの受注増加
後継者の有無
後継者の育成状況
承継のタイミング・関係
後継者候補複数あり
技術部長 杉村聡(代表者弟) 製造部長 杉村泰臣(代表者弟)
他、柔軟に検討できる社内体制となっている
主な取引先企業の推移 当社の営業技術部門の技術力は高く、顧客からのフィードバックによる対応は他社を抜き出ている。
企業及び事業沿革
※ターニングポイントの把握
1980年12月:資本金500万(社外取締役) 1991年8月:所在地に本社、金型の内製開始 2000年10月:株式会社化 2003年:自動車部品製造本拠地を千葉開始 2014年10月:社内情報化推進 2015年:266号工場竣工(生産増強) 2017年:5号車線一部 大内工場の敷地内再開発 現在は約1000万円で2018年より5号車線二期工事、M/F 技術大増強 顧客からのフィードバックの有無 平均勤続年数10年未満。2015年の第二工場の稼働に伴い、大幅に人員増加したが要因。定着率は高いため今後勤続年数は増加、平均給与は地区内平均水準以上で推移。
② 事業 強み
技術力・販売力等
国内大手自動車メーカーからの信頼を得る技術力の高さと、最高峰の生産設備であるプレス機の保有
若い技術者が多数在籍し、従業員の多能化が実現されている
③ 内部管理体制 取引金融機関数・推移 諏訪信用金庫をメインバンクとしており、関係性は密着。
弱み
技術力・販売力等
年商以上の金融債務
技術力向上と量産体制の構築のため設備投資が必要
メインバンクとの関係 他、第2地銀、県信連
ITに関する投資、活用の状況 1時間当たり付加価値(生産性)
オートメーション化を常に考え導入中。採算性にも大幅に寄与している。
組織体制 品質管理部門の担当部長の統率力は高く、年々不良率は低減している。
向上に向けた取り組み 品質管理・情報管理体制
④ 内部管理体制 事業計画・経営計画の有無 中長期計画あり
社内に共有されており、定期的な進捗管理で共有している。
⑤ 対話内容の総括 事業計画・経営計画の有無 中長期計画あり
社内に共有されており、定期的な進捗管理で共有している。
従業員との共有状況 従業員との共有状況
社内会議の実施状況 社内会議の実施状況
研究開発・商品開発の体制 技術部長を中心とした研究開発・要素実験は常に実施中。 研究開発・商品開発の体制 技術部長を中心とした研究開発・要素実験は常に実施中。
⑥ 外部関係 知的財産権の保有・活用状況 金型に対する知的財産は豊富であり、共有化が図られている。 ⑦ 対話内容の総括 知的財産権の保有・活用状況 金型に対する知的財産は豊富であり、共有化が図られている。
人材育成の取り組み状況 総務部長による個別ミーティング実施中。 人材育成の取り組み状況 総務部長による個別ミーティング実施中。
人材育成の仕組み 人材育成の仕組み
ITに関する投資、活用の状況 ITに関する投資、活用の状況

現状認識 技術に裏付けされた高度なプレス製品であり、価格競争力もある。
人材も育成されており、金型設計部門の技術者の力量は高い。
先行した設備投資負担(金融債務)は多額である。
将来目標 売上高の増加・・・年間10%ずつ増加させ、5年後には30億円を目指す
人材育成と組織力強化・・・社員研修プログラムを充実させ、専門スキルを高める
財務基盤の強化・・・コスト削減と効率化を図り、利益率を向上させる
現状と目標のギャップ
課題 売上高の増加・・・需要の減少・価格競争の激化、サプライチェーンの不安定性
人材育成と組織力強化・・・組織内コミュニケーションの欠如
財務基盤の強化・・・コスト削減の限界、財務リスクの管理
対応策 売上高の増加・・・価格以外の価値(品質・サービス提供速度)を強化し、価格競争からの脱却を図る。
人材育成と組織力強化・・・コミュニケーションプラットフォームの導入、社内SNS、定期的な横しーティングの開催
財務基盤の強化・・・業務プロセスの見直しと自動化の徹底した推進、リスクヘッジ戦略の導入(デリバティブ取引や保険の活用)
Logo of the Ministry of Economy, Trade and Industry (METI)
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資料:諏訪信用金庫作成

22 「6つの指標」は、「売上増加率」「営業利益率」「労働生産性」「EBITDA有利子負債倍率」「営業運転資本回転期間」「自己資本比率」のことを指す。

23 「4つの視点」は、「経営者への着目」「事業への着目」「企業を取り巻く環境・関係者への着目」「内部管理体制への着目」のことを指す。